特許 令和7年(行ケ)第10076号「車両誘導システム」(知的財産高等裁判所 令和8年1月22日)
【事件概要】
本件は、無効審判事件において、「本件審判の請求は、成り立たない。」とした審決が維持された事例である。
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【争点】
主な争点は、本件出願が、分割要件を満たしているか否かである。
【結論】
審決は、本件特許(第7世代の分割特許出願)の構成要件B等に含まれる事項は、いずれも当初明細書等に記載されているため、本件特許の出願日が、第5世代分割出願の出願日である平成26年12月2日であるとする根拠はなく、甲7(最初の原出願の特許掲載公報)は、本件特許の出願日前に公開されたものとはいえないから、本件特許が特許法29条1項3号の規定に違反して特許されたということはできないと判断した。
これに対し、原告は、第4世代分割出願の当初明細書等には、本件特許の構成要件Bのうち「有料道路料金所から出る車両を検知する手段」、「サービスエリア又はパーキングエリアに入る車両を検知する手段」及び「サービスエリア又はパーキングエリアから出る車両を検知する手段」が記載されていないから、本件特許の出願日は、第5世代分割出願の出願日である平成26年12月2日であるとすべきである旨主張した。
判決は、以下の通り判示した。
本件各発明に係る特許請求の範囲の記載においては、本件各発明は、「有料道路料金所、サービスエリア又はパーキングエリアに設置されている、ETC車専用出入口から出入りをする車両を誘導するシステム」(構成要件A)であるとされ、これを受けた構成要件Bでは、「前記」として、「有料道路料金所、サービスエリア又はパーキングエリアに出入りをする車両」を検知する検知手段を規定している。このような特許請求の範囲の記載からすると、本件各発明における「出入りをする車両」とは、構成要件Aに規定するような、「ETC車専用出入口」を通過して、有料道路、サービスエリア又はパーキングエリアと、一般道路との間を「出入り」しようとする車両を意味すると解するのが自然であり、また、構成要件Bの「前記有料道路料金所、サービスエリア又はパーキングエリアに出入りをする車両を検知する第1の検知手段」とは、一般道路から有料道路、サービスエリア若しくはパーキングエリアに「入る」ために、又は、有料道路、サービスエリア若しくはパーキングエリアから一般道路に「出る」ために、ETC車専用出入口を通過しようとする車両を検知する検知手段をいうと解するのが相当である。そして、このような検知手段としては、本件明細書等において、入口料金所につき【0033】及び【図4】に、出口料金所につき【0050】及び【図6】に、スマートインターチェンジにつき【図11】に、それぞれ記載されている2a(車両検知装置)がこれに相当するということができるから、これらの点に関し、当初明細書等の記載は、本件明細書等の記載と実質的に異なるところはなく、構成要件Bに記載された事項は、当初明細書等にも記載されているということができ、分割特許出願の要件に欠けるところはなく、本件出願は、最初の原出願の出願日である平成16年9月13日にされたものとみなされる。
【コメント】
原告は、本件各発明は「料金所」内で発生する課題を解決しようとするものであるから、請求項の記載は、料金所を起点に解釈されるべきであると主張したが、判決は、発明の要旨を認定するに際して、発明特定事項が、課題が発生する場所を起点に位置関係等を規定したものと常に解釈すべきとする根拠はなく、発明の要旨は、特許請求の範囲の記載に基づいてされるべきところ、特許請求の範囲から導かれる自然な構成要件Bの解釈は上記のとおりであり、本件明細書等の記載も、上記解釈を裏付けているというべきであるから、本件各発明が料金所内で発生する課題を解決しようとするものであるとしても、それは、上記と異なる解釈をすべき理由とはならないとして原告の主張を採用しなかった。